診療内容
診療内容
① 閉塞性動脈硬化症(PAD)について
閉塞性動脈硬化症は全身の動脈硬化の一症状であり、下肢に行く血流が乏しい病態の事を言います。最近では末梢動脈疾患(PAD)と呼ばれるようになりました。閉塞性動脈硬化症により、下肢の間欠性跛行、冷感、疼痛、潰瘍、壊疽などの症状が出現します。特に、安静時疼痛、潰瘍、壊死などが出現した場合はお薬などの内科治療では改善せず、下腿切断にいたることが多いため、外科的血行再建術が必要となります。外科的治療は大まかにわけると2種類の治療があります。一つは血管内治療であり、カテーテルを用いて狭くなった血管を風船で拡張したり、形状記憶合金からなるステントを血管の中に挿入することにより血流をよくする治療です。二つ目はバイパス手術で、閉塞した血管を人工血管あるいは自分の静脈をもちいて正常な血管から正常な血管へ橋渡しする手術のことです。また、下腿潰瘍、壊疽につきましても、形成外科医、フットケアを専門とする看護師・装具士と連携し、血行再建と創傷治療を同時に行うことができます。
② 大動脈瘤について
大動脈瘤とは、正常な大動脈内腔の一部位、または複数部位が病的に拡張した状態のことを言います。大動脈の拡張は、おもに老化や動脈硬化が原因で起こります。大動脈瘤は一旦形成されてしまうと、元のサイズに戻ることはありません。発見されたあとでも血圧を下げる薬(降圧剤)で血圧コントロールをすることにより、拡張する速度を遅らせることはできますが、大きさや形によっては、破裂の危険性が高く手術的治療が必要な場合があります。腹部大動脈瘤
一般に4〜5cmを超えると破裂のリスクが高くなりますので手術の適応となります。腹部大動脈瘤が破裂すると、腹部あるいは腰に激痛が起こり、出血のため血圧が低下し、最終的には多臓器不全で死亡します。破裂した状態で手術すると救命率は約50%とされています。よって、破裂する前に治療するのが原則です。腹部大動脈瘤の根本的な治療法としては、開腹し瘤を切除し、人工血管に置換する手術ですが、最近では身体に負担の少ない治療法として、腹部ステントグラフト治療も普及してきました。動脈瘤の形や、動脈瘤の原因、年齢や全身合併症、開腹手術の既往歴などを総合的に考慮し腹部ステントグラフト治療がよいか開腹手術がよいかを判断し手術を施行します。ステントグラフト治療は比較的新しい技術であり、血管病に関連する10の医学会が合同して設立した「日本ステントグラフト実施基準管理委員会」により、決められた実施基準を満たす病院と医師の審査が行われています。当院は、日本ステントグラフト実施基準管理委員会に定められた実施施設であり、指導医1名が常勤し治療にあたります。
胸部大動脈瘤
腹部大動脈瘤と同様、胸部大動脈瘤が破裂すると症状は重症で、激しい胸部の痛み、呼吸苦、意識障害などを起こし、突然死することもあります。胸部大動脈瘤の根本的な治療法としては、開胸して瘤を切除し、人工血管に置換する方法がありますが、動脈瘤の部位によっては、身体に負担の少ない治療として胸部ステントグラフトが第一選択になることがあります。動脈瘤の形や、動脈瘤の原因、年齢や全身合併症などを総合的に考慮し胸部ステントグラフト治療がよいか開胸手術がよいかを判断し手術を施行します。
当院は、日本ステントグラフト実施基準管理委員会に定められた実施施設であり、指導医1名,実施医3名が常勤し治療にあたります。
③下肢静脈瘤について
下肢静脈瘤は足の表面の静脈が拡張する病気です。原因は静脈内の弁の機能不全であることが多く、その場合は治療の対象となります。太くなった静脈が目立つようになったという外観の問題のみの方も多いのですが、静脈瘤が原因で血液のうっ滞をきたして皮膚の炎症や潰瘍を生じたり、静脈炎を発症して強い痛みを伴うこともあります。当院では超音波検査や静脈脈波検査などの検査を行い、症状や検査結果を基に手術の要否を判断しています。当院の下肢静脈瘤手術は主に、血管内焼灼術(レーザーによる治療)と抜去・切除術で対応しています。血管内焼灼術は下肢静脈瘤の原因となっている伏在静脈にレーザー照射用の細いカテーテルを挿入し、レーザー光による焼灼で静脈を閉塞させてしまう治療です。皮膚の表面の静脈瘤には切除術または硬化療法(注射剤により血管を閉塞させる)を行います。傷が小さくてすむ場合が多く、また局所麻酔で行えるために日帰り手術が可能な優れた治療法です。一方、抜去・切除術は伏在静脈を特殊な器具を用いて抜き取る方法です。血管内焼灼術と比較するとやや大きな傷になりますが、根治性の高い治療法です。また血管内焼灼術が適さない病態の場合には、とても有用な治療法です。当院では入院治療で抜去・切除術を行っています。