しずおか日赤メールマガジンMailmagazine blog

しずおか日赤メールマガジン第226号

2024年5月31日

梅雨がもうそこまでやってきておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
6月1日は公益社団法人日本写真協会が「写真の日」と制定しております。
天保12年(1841年)にオランダ人から長崎にもたらされ、6月1日に島津斉彬を写した
という記録を基に制定されています。のちの調査でこの事柄が誤りであると確認された
ものの、引き続き6月1日を写真の日としているようです。
現代社会においてはスマートフォンが普及し、SNS上で写真データが全世界で共有される
など、江戸時代とは隔世の感があります。
それでは、メールマガジン第 226号をお届けいたします。
引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞ宜しくお願いいたします。

腰椎椎間板ヘルニアの新治療

先月号に引き続き、整形外科部長・脊椎センター長の高橋洋平医師に教えていただきます。

腰椎治療に新たな選択肢

多くの人が悩んでいる腰痛、その原因として時折耳にするのが腰椎椎間板ヘルニア。
これまで保存療法か手術の二択と考えられていたこの病気に、近年新しい治療法が登場。
昨秋より脊椎センター長に着任した高橋医師にお話を伺ってきました。

いつ、誰にも起こりうる腰椎椎間板ヘルニア

突然の腰痛、さらに片側のお尻から太腿の裏や外側、スネの外側~足にかけて激痛やしびれを生じさせる腰椎椎間板ヘルニア。ヘルニアとは、背骨の骨と骨の間でクッションの役割を担う椎間板の一部がなんらかの原因によって後方に飛び出し神経を刺激して、腰から脚に強い痛みやしびれを生じさせる病気のこと(図1)。特に腰椎のヘルニアは、いつ誰にも起こりうる、とても身近な病気です。
椎間板ヘルニアの多くは時間の経過とともに吸収され、それとともに痛みが引くこともあるため、まずは保存療法として飲み薬や注射で痛みを抑えながら、腰に負担をかける動作を控えるようにします。この治療によって8割程度の患者さんは症状が改善しますが、3ヶ月経っても症状が続く方、あるいは激痛で足が動かなくなったり排尿障害を生じたりと日常生活に支障をきたすような場合は3カ月未満でも手術でヘルニアを除去することを検討します。
図1 腰椎椎間板ヘルニアの生じる仕組み

新たな治療法の登場で、より低侵襲な治療が可能に

従来、腰椎椎間板ヘルニアの治療は保存療法か手術しか選択肢がありませんでしたが、2018年8月より「椎間板内酵素注入療法」という新しい治療ができるようになりました。
これは背中から椎間板に針を刺し、コンドリアーゼという酵素を注入するという日本発の治療法(図2)。治療時間は局所麻酔で10分程度、治療直後から6カ月までゆっくりと症状は改善、治療後1年で手術同等の効果が得られ、本治療後に手術に至るのは5〜10%とされています。手術と比べて費用が安く、治療も短時間で済むといったメリットがあります。
腰椎椎間板ヘルニアは罹病期間が半年〜1年超におよぶと、手術を行っても症状が改善しにくくなるという報告もあります。手術には踏み切れないけれど痛みが強く、また痛み止めの副作用が強く出てしまう方にとって、新しい治療法は有用な選択肢。当院でも多くの方にはっきりとした効果がみられています。
ただし2度目の注射には高度のアレルギー反応が起こる可能性があるため一生に1回しかできなかったり、下肢麻痺のある方や椎間板が傷み酵素注入が難しいなど、この治療が向かないケースもあります。当院は日本脊椎脊髄病学会認定の椎間板酵素注入療法実施可能施設です。患者さんの意思を尊重しつつ、症状や状況を確認しながら治療法を決定しますので、お悩みの方はぜひご相談ください。
図2 椎間板内酵素注入療法のイメージ。NHKワールド「メディカルフロンティア」にて、高橋医師の前勤務先である慶應大学病院整形外科での治療とともに詳しく紹介されています

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