しずおか日赤メールマガジンMailmagazine blog

しずおか日赤メールマガジン第213号

2023年4月28日

風薫るさわやかな季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
5月1日は日本赤十字社の創立記念日です。(当院は休診となります)
当社の前身である博愛社は1877年設立されました。創立者である佐野常民が、西南戦争の負傷者救護のため、救護団体による戦争、紛争時の傷病兵の救護の必要性を痛感し、ヨーロッパにある赤十字と同様の救護団体を作ろうと思い立ったのが始まりです。
なお、詳しい歴史については、日本赤十字社のホームページからご覧いただけます。興味をお持ちになられた方はどうぞご覧ください。
それでは、メールマガジン第 213号をお届けいたします。引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞ宜しくお願いいたします。

先月号に引き続き、糖尿病・内分泌代謝内科 平原直子医師からお話をうかがいます。

正しく知っておきたい「妊娠糖尿病」

さまざまなリスクがある妊娠中の糖代謝異常

一般に「糖尿病」とは、糖代謝を司るインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気のこと。これに対して「妊娠糖尿病」とは、妊娠中に初めて発見された軽度の糖代謝異常を指します。空腹時または食後の血糖値が異常に高くなった状態で、いわば糖尿病の一歩手前の状態です。
妊娠糖尿病の診断基準は一般的な糖尿病より厳しく定められているのですが、その理由は、妊娠中の高血糖は胎児の過剰発育が起こりやすく、さまざまな合併症を起こしやすいためです(図1)。
また妊娠中の母体は胎児に絶えず栄養を与えているため、空腹時の血糖値は低くなることが多く、その一方で胎盤から出るホルモンの影響でインスリンが働きにくくなるために、食後の血糖値は上がりやすい。このように妊娠中の体は、たとえもともと糖尿病がない方でも、血糖値が高くなりやすい状態にあるのです。
妊娠糖尿病と診断されるのは妊婦さん全体の7〜9%。妊娠糖尿病の危険因子には糖尿病の家族歴や肥満、35歳以上の高年齢、また過去に妊娠・出産を経験している方であれば4000g以上の巨大児分娩や原因不明の習慣性早産、周産期死亡率など、さまざまな事柄があります。
ちなみに妊娠前から糖尿病と診断されている場合(糖尿病合併妊娠)や、妊娠中に明らかな糖尿病が認められる場合は妊娠糖尿病とは呼びませんが、これらは妊娠糖尿病よりもっと重い状態ですから、さらに厳密な血糖管理が必要となります。



治療は食生活の改善とインスリンの投与

治療の基本は食事療法とインスリンの投与。食生活が偏っていた場合はまず食の改善からスタートしますが、必要な栄養が足りていないと赤ちゃんの成長に悪影響を及ぼすこともあるので、極端な食事制限はNG。通常はバランスのとれた食事をとりながら、適切な量のインスリンを使っていきます。インスリンに対して抵抗を持つ方もいますが、投与が必要なのは出産までの限られた期間。妊娠週数が進むにつれてインスリンの量は増えていきますが、出産を終えればインスリン投与は必要なくなります。また使用されるインスリンは妊娠中の使用について推奨されたものですので、赤ちゃんの健康のためにもインスリンを忌避せず使用してほしいです。
また妊娠糖尿病と診断された場合、出産後に血糖値が改善しても、将来的に再び糖尿病を発症するリスクがあります。ですから、経過観察や定期検診の受診はとても大事。出産後のお母さんは子育てに忙しく、つい自分の健康管理を後回しにしがちですが、周囲のご家族もぜひ気を配っていただければと思います。

赤十字情報プラザ企画展及び赤十字WEBミュージアムのお知らせ

日本赤十字社では先人から受け継いだ赤十字の歴史的・文化的遺産の一部を公開しています。現在、特別企画「関東大震災100年 温故備震~ふるきをたずね明日に備える~」公開中!ぜひご覧ください。

1923(大正12)年9月1日、午前11時58分に起きたマグニチュード7.9の大地震は、火災、津波、土石流をともなう未曾有の大災害となりました。
そのときすでに日本赤十字社は、戦時救護のノウハウを活かして自然災害に対応する救護班や救護資機材を整備していました。また、全国の赤十字の支部や病院に加え、活発に活動するボランティアの存在がありました。このような日ごろからの備えと全国的なネットワークが、日赤による関東大震災での救護活動の基盤となったのです。
日赤の歴史は、救護活動の経験と反省をくり返し、備えを改善してきた歴史でもあります。しかし、どんなに救護活動そのものが進歩したとしても、大災害時に救える命には限りがあります。本特別企画では、「温故知新(おんこちしん)」を言い換え「温故備震(おんこびしん)」と題しました。この言葉には「関東大震災をふりかえることで、明日の災害に備えてほしい」という願いを込めています。
備えることは行動すること。一人ひとりが最善の行動をとるために、先人の取り組みをふりかえります。
赤十字WEBミュージアムこちらからどうぞ

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