しずおか日赤メールマガジンMailmagazine blog
しずおか日赤メールマガジン第205号
2022年8月31日
蝉の鳴き声に耳を傾けてみると、ミーンミーンからホーシツクツクとつくつくぼうし(法師蝉)が鳴いていることに気づきました。つくつくぼうしが初秋の季語にあるように、朝晩の風が爽やかに心地よい風に変わってきたなと肌で感じます。とは言っても昼間は残暑も厳しく夏の疲れが出てくる頃です。みなさまお身体にはご自愛ください。
それではメールマガジン第205号をお届けいたします。引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞ宜しくお願いいたします。
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今!考え、行動する「子宮頸がん予防」
今春よりワクチン接種の積極的勧奨が再開された子宮頸がん。ただその実態については意外なほど知られていません。
「多くの人が予防を徹底すれば排除できる病気」「自分ごととして考えてほしい」と当院婦人科の市川・栗原医師は口を揃えます。
「多くの人が予防を徹底すれば排除できる病気」「自分ごととして考えてほしい」と当院婦人科の市川・栗原医師は口を揃えます。
◆子宮頸がんという病気にあまりなじみがない人もいるようです。どんな病気なのですか。
栗原医師(以下栗原): 子宮頸部(子宮の入口部分)にできるがんのことで、発生にはHPV(ヒトパピローマウイルス)という、人間の皮膚や粘膜に感染するウイルスが関わっていることがわかっています。感染は一般に性行為により、性交経験のある人の多くが一生に一度は感染すると言われるほどありふれたウイルスです。実際感染しても多くはそのまま消滅するのですが、長期にわたり感染した状態が続くと前がん状態(がんになる前に発生する病変状態)となり、これががんへと移行します。
市川医師(以下市川): 従来40〜50代に多い病気だったのですが、近年急激に若年化。前がん病変も含めた場合、20~39歳までの部位別がん発生率のトップは子宮頸部の腫瘍です。子宮頸がん発症は30~34歳から増えはじめ、35~39歳でピークに。生涯で子宮頸がんを発症する人は75人に1人、亡くなる方は312人に1人と意外と身近な病気です。
栗原 :20〜30代といえば仕事も忙しく、結婚・出産を経験する方も多い年代。これから仕事を頑張りたい方、出産を望んでいる方が、病気のためにこれらを諦めなくてはならないというのはつらいことですし、もちろん進行すれば命にも関わります。ワクチンで感染や発症のリスクを下げられることには大きなメリットがあります。
◆子宮頸がんワクチンにはどれくらい予防効果があるのですか。
市川 :その説明のためには、国内で子宮頸がんワクチン接種が始まった当時の状況からお話しします。日本で子宮頸がんワクチンが承認されたのは2009年。2013年4月より定期接種が開始され、当時の接種率は70%を超えていました。しかし、その後副反応の危惧から厚生労働省は同年6月に積極的勧奨を中止。この時点でワクチンを接種していたのは当時勧奨年齢だった1994〜1999年生まれの方なのですが、臨床の現場にいると、ワクチンをしっかりと接種していた世代の子宮頸がんや前がん状態での受診が明らかに少ないことを実感します。またワクチンは前がん病変を抑えるだけでなく、命に関わる浸潤がんの発生を88%減らすことが、10~30歳の女性167万人を追跡した研究で明らかになっています(図1)。
栗原: 2013年の定期接種開始後に報告されたけいれんや痛みなどの病態を心配する声も聞かれますが、その後の調査や研究によって、これらの病態とワクチンとの因果関係は明確に否定されています(※2)。副反応のリスクは他の定期接種と同程度と考えるのがよいかと思います。
◆現在勧奨年齢にある方は積極的な接種が望まれるということですね。では、ワクチン接種の機会を逃してしまった世代(1997年4月2日~2006年4月1日生まれの人)は、予防のためにどうしたら良いのでしょう。
栗原 :まずワクチンのキャッチアップ接種です。この世代での接種でも浸潤がん発生は53%減少していますので、ワクチンは重要な選択肢。特に性経験がない方は、定期接種同等の効果が期待できます。厚生労働省では17~30歳の未接種者を対象に公費助成を行っており、総額6万円近くかかるワクチンを無料で接種できます。ただ3年間限定ですので、お住いの自治体に早めに確認することを勧めます。
市川 :次に、2年に一度の定期検診の受診です。すでにHPVに感染している場合でも、早期発見できれば適切な治療を受けることができます。各自治体では子宮頸がんの定期検診開始年齢である20歳の女性に無料で受診できるクーポンを発行していますが、若い世代の受診率は15%程度と不十分。定期検診を受診しないというのは、リスクのある状態にさらされているのだということを改めて理解してほしいです。
◆最後にみなさまに、産婦人科医師よりメッセージを。
市川 :今、子宮頸がん排除は全世界的な動きとなっています。ワクチン接種はすでに標準的な予防策と認識されていて、接種率が8割を超えている国もあります。現状日本の接種率はわずか0.8%ですが、しかし子宮頸がんワクチンの浸潤がん予防効果が次第に明らかになり、ここ1〜2年でワクチンを接種する方は確実に増えてきています。今回の接種勧奨再開が、より多くの方に子宮頸がん予防を考え、自分にあった予防行動をしていただく機会になり、つらい思いをする女性やその家族が一人でも減ることを願っています。
栗原 :ワクチンによる予防と定期検診の両方を行うのが理想的な選択ではありますが、接種したくてもできない方、接種はしないと決めている方、検診対象年齢でない方もいらっしゃるかと思います。最も大切なのは、できることを先送りにせず、今できる予防行動をひとつずつ積み上げていくこと。今の自分や家族にとってどうするのが一番良いのか、悩まれる時にはいつでも産婦人科に相談して下さい。
栗原医師(以下栗原): 子宮頸部(子宮の入口部分)にできるがんのことで、発生にはHPV(ヒトパピローマウイルス)という、人間の皮膚や粘膜に感染するウイルスが関わっていることがわかっています。感染は一般に性行為により、性交経験のある人の多くが一生に一度は感染すると言われるほどありふれたウイルスです。実際感染しても多くはそのまま消滅するのですが、長期にわたり感染した状態が続くと前がん状態(がんになる前に発生する病変状態)となり、これががんへと移行します。
市川医師(以下市川): 従来40〜50代に多い病気だったのですが、近年急激に若年化。前がん病変も含めた場合、20~39歳までの部位別がん発生率のトップは子宮頸部の腫瘍です。子宮頸がん発症は30~34歳から増えはじめ、35~39歳でピークに。生涯で子宮頸がんを発症する人は75人に1人、亡くなる方は312人に1人と意外と身近な病気です。
栗原 :20〜30代といえば仕事も忙しく、結婚・出産を経験する方も多い年代。これから仕事を頑張りたい方、出産を望んでいる方が、病気のためにこれらを諦めなくてはならないというのはつらいことですし、もちろん進行すれば命にも関わります。ワクチンで感染や発症のリスクを下げられることには大きなメリットがあります。
◆子宮頸がんワクチンにはどれくらい予防効果があるのですか。
市川 :その説明のためには、国内で子宮頸がんワクチン接種が始まった当時の状況からお話しします。日本で子宮頸がんワクチンが承認されたのは2009年。2013年4月より定期接種が開始され、当時の接種率は70%を超えていました。しかし、その後副反応の危惧から厚生労働省は同年6月に積極的勧奨を中止。この時点でワクチンを接種していたのは当時勧奨年齢だった1994〜1999年生まれの方なのですが、臨床の現場にいると、ワクチンをしっかりと接種していた世代の子宮頸がんや前がん状態での受診が明らかに少ないことを実感します。またワクチンは前がん病変を抑えるだけでなく、命に関わる浸潤がんの発生を88%減らすことが、10~30歳の女性167万人を追跡した研究で明らかになっています(図1)。
栗原: 2013年の定期接種開始後に報告されたけいれんや痛みなどの病態を心配する声も聞かれますが、その後の調査や研究によって、これらの病態とワクチンとの因果関係は明確に否定されています(※2)。副反応のリスクは他の定期接種と同程度と考えるのがよいかと思います。
◆現在勧奨年齢にある方は積極的な接種が望まれるということですね。では、ワクチン接種の機会を逃してしまった世代(1997年4月2日~2006年4月1日生まれの人)は、予防のためにどうしたら良いのでしょう。
栗原 :まずワクチンのキャッチアップ接種です。この世代での接種でも浸潤がん発生は53%減少していますので、ワクチンは重要な選択肢。特に性経験がない方は、定期接種同等の効果が期待できます。厚生労働省では17~30歳の未接種者を対象に公費助成を行っており、総額6万円近くかかるワクチンを無料で接種できます。ただ3年間限定ですので、お住いの自治体に早めに確認することを勧めます。
市川 :次に、2年に一度の定期検診の受診です。すでにHPVに感染している場合でも、早期発見できれば適切な治療を受けることができます。各自治体では子宮頸がんの定期検診開始年齢である20歳の女性に無料で受診できるクーポンを発行していますが、若い世代の受診率は15%程度と不十分。定期検診を受診しないというのは、リスクのある状態にさらされているのだということを改めて理解してほしいです。
◆最後にみなさまに、産婦人科医師よりメッセージを。
市川 :今、子宮頸がん排除は全世界的な動きとなっています。ワクチン接種はすでに標準的な予防策と認識されていて、接種率が8割を超えている国もあります。現状日本の接種率はわずか0.8%ですが、しかし子宮頸がんワクチンの浸潤がん予防効果が次第に明らかになり、ここ1〜2年でワクチンを接種する方は確実に増えてきています。今回の接種勧奨再開が、より多くの方に子宮頸がん予防を考え、自分にあった予防行動をしていただく機会になり、つらい思いをする女性やその家族が一人でも減ることを願っています。
栗原 :ワクチンによる予防と定期検診の両方を行うのが理想的な選択ではありますが、接種したくてもできない方、接種はしないと決めている方、検診対象年齢でない方もいらっしゃるかと思います。最も大切なのは、できることを先送りにせず、今できる予防行動をひとつずつ積み上げていくこと。今の自分や家族にとってどうするのが一番良いのか、悩まれる時にはいつでも産婦人科に相談して下さい。
※1 Lei J, Ploner A, Elfström KM, Wang J, Roth A, Fang F, et al. HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer. N Engl J Med. 2020;383(14):1340–8.
※2 Suzuki S, Hosono A. No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study. Papillomavirus Res [Internet]. 2018;5(February):96–103. Available from: https://doi.org/10.1016/j.pvr.2018.02.002
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静岡十字病院 産婦人科外来 054-254-4311(病院代表)
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