しずおか日赤メールマガジンMailmagazine blog

第152号 平成30年04月01日発行

2018年4月1日

春の気配がようやく整ってきたようですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、東京の上野動物園ではパンダの赤ちゃん「シャンシャン」が昨年誕生し、一般公開も始まって、人気を博していますね。
今月28日はそのパンダや人間よりも大きくて、陸の哺乳類では最大の動物である「象」の日です。その象が1729(享保14)年、ベトナムからの献上品として清の商人により初めて日本にやって来た日にちなんでいるそうです。最初に中御門天皇の御前で披露され、その後江戸に運ばれ、5月27日に将軍の徳川吉宗の元に送られたそうです。その象の大きさに、当時見た人も驚いたのではないでしょうか。
それでは、メールマガジン第152号をお届けいたします。
引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞ宜しくお願いいたします。

あらためて注目される主治医機能~総合内科~

発熱やだるさ、食欲不振やむくみなど 原因不明の不調に気づいた時、頼りになるのが「総合内科」。 当院はその重要性に早くから注目、 県内でもいち早く診療科を設立し、専門医育成にも力を入れています。 今春より第二内科部長を務める池上先生より総合内科の治療について伺います。

大阪市出身。名古屋市立大学を卒業後、研修医時代に出合った「総合プロブレム方式」が総合内科医を志すきっかけに。当院には2011年より勤務。同方式に関する研修・指導でも知られ、指導書を共著で上梓したことも。家庭では2女の良きパパ。
 

総合内科ではどんな治療を行うの?

総合内科ではまず患者さん本人から、その時点で最も気になっている不調について話を聞き、さらに過去の病歴・治療歴、後遺症の有無、ふだんの生活の様子など詳しく伺っていきます。問診は患者さんの状況、年齢や病歴などにもよりますが、長ければ30分ほどかかることも。これらの問診と身体所見、検査所見などにより、現在の不調の原因を分析し、必要な投薬を行ったり、食事や運動などの生活指導を行いながら経過を見ていきます。
第二内科部長
池上良医師

総合プロブレム方式とはどのようなものですか?

当院で採用している「総合プロブレム方式」は、診療方式でもあり、またカルテの記載方法でもあります。ひとりの患者さんが不調を訴えた時、その不調の原因は単一の病気であることももちろんありますが、実際には複数の病気を重複して抱えている場合も数多くあります。患者さんが現在抱えている病気(プロブレム)をもれなく抽出し、それぞれのプロブレムに対して検査・治療を計画し、その決定に対して責任を負う。これが総合プロブレム方式です。

そもそも総合内科とは?外来でのかかり方

当院の場合、一般外来として来院された患者さんにはまず1階外来受付で看護師による問診を受けていただき、担当する診療科を振り分けています。当院では呼吸器内科や消化器内科、血液内科、神経内科などの専門の診療科がありますので、明らかに専門科で診るべき症状がある場合は各科が担当します。一方、内科系疾患が疑われるもののどの専門かが定まらない症状もあり、そうした症状にお悩みの患者さんを診るのが総合内科です。また救急外来を経由して受診される患者さんも多くみられます。

複雑な症状を適切に整理「総合プロブレム方式」

静岡赤十字病院では平成16年に総合内科を設立。患者さんの治療とともに、総合内科専門医の研修・育成にも力を入れています。
戦後の日本で行われていた内科治療は、ごく大雑把にいえば「内臓に起こった症状全般を診る診療科」でした。やがて医療の進歩とともに医療分野の細分化が進み、各分野でのスペシャリストが育成され、高度な医療が提供されるようになりました。しかし、それぞれの臓器疾患については高い成果を上げている一方で、ひとりひとりの患者さんに目を向けてみれば、はっきりした原因がわからない症状というのはなお存在します。原因不明の発熱や咳、関節痛やだるさ、食欲不振やむくみなど、ひとつひとつの症状は一見軽微に見えても、それらが重なることでつらい思いをしている方はやはり多い。こうした状況の中で、原点回帰する意味で登場したのが総合内科です。
現在のスペシャリストの診療は、その得意とする分野内での知識や経験に基づいて診療するがゆえに、分野外の病気(プロブレム)に対しての対応力が不足してしまう傾向にあります。しかし実際の患者さんが、多分野にまたがる複数のプロブレムを一度に抱えていることは珍しくありません。このような患者さんの診療において特に威力を発揮するのが、当院総合内科で採用している「総合プロブレム方式」です。ひとつひとつはコモンディジーズ(一般的な病気)であっても、それらが複数集まると、途端に病状は複雑に見えます。総合プロブレム方式は、そんな複雑な状況の中に隠れて存在する病気や、関連する病気を適切な方法で整理し、合理的に解決するための方法です。

現代社会に求められる「主治医機能」の重要性

患者さんは、ひとりひとり体質や症状が違うように、生活や人生観もそれぞれ異なります。問診や検査所見だけではなくそれぞれの患者さんの生き方まで考え、優先順位をつけながら治療にあたることは、とても重要。高度医療の提供が可能となり、また高齢化が進む現代社会では、誰もが複数の病気を抱えながら生活していくことは当たり前。そのため、個々の病気ではなく、ひとりの人間が抱える複数の病気に対して診療責任を負う「主治医機能」の重要性があらためて見直されているのです。
それぞれ異なる人間性をもつ患者さんに対して、それぞれが抱える複数のプロブレムにどう優先順位をつけて、治療するか。そこに主治医たるべき総合内科医の役割があると考えています。

各国赤十字社 緊急対応チームが出動!

バングラデシュ南部避難民救援事業へ下山看護師長を派遣しました

国際赤十字の一員として世界各地での紛争や自然災害の被災者を救援し、復興活動を支援している日本赤十字社。現在ミャンマーで発生している混乱に伴い、バングラデシュへの難民流出が続く中、日本赤十字社では緊急対応ユニット(ERU)を現地に派遣。その一環として当院では手術室所属の下山美穂看護師長を派遣、1月5日~2月22日の約2ヶ月間にわたり、同国コックスバザール周辺の難民キャンプにて医療救護活動にあたりました。
同看護師長は過去にもイラン、ハイチ震災での活動経験があり、今回が3回目の海外派遣。「派遣を送り出してくれた手術室スタッフ、関係者の皆さんに感謝。過去の経験を活かし、国を越えて同じ目的を持った仲間と活動できる喜びを感じながら、バングラデシュ南部避難民の時代背景や文化の違いを考慮し、1人1人の想いに寄り添った活動を行いました。」(下山看護師長)
日本赤十字社では、引き続き国際救援活動にも力を入れて参ります。
 

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