しずおか日赤メールマガジンMailmagazine blog

第149号 平成30年01月01日発行

2018年1月1日

謹んで新春のお慶びを申し上げます。皆様にとって素晴らしい1年となりますように、ご多幸とご健勝を心よりお祈り申し上げます。
さて、当院はグランドオープンして早いもので1年が経過しました。今後も益々「人道」「博愛」の赤十字精神に基づく、より良質な医療の提供に努めて参ります。
本年も引き続き温かいご支援を賜りますよう、どうぞ宜しくお願いいたします。
それでは、メールマガジン第149号をお届けいたします。

早期受診が重要! 呼吸器疾患への外科的アプローチ

私たちひとりひとりの生命維持に大きな役割を果たす呼吸器。日本人男性の死因トップである「肺がん」や芸能人の罹患をきっかけに知られるようになった「自然気胸」など身近な病気と治療方法について外科の観点より当院、稲葉先生にお話を伺いました。

稲葉医師は呼吸器外科部長として年間90例以上もの症例を手がけるほか、災害発生に当たって複数のDMATをまとめる「統括DMAT」の資格を有し、県および当院の災害医療コーディネーターも兼務。多忙な職務の合間には清水エスパルスにもかかわるなど、地元愛に厚い。誠実な人柄で患者さんからの信頼を集める。長年の経験に基づき、術後の状況まで考えて最善を尽くす。
呼吸器外科部長
稲葉浩久医師

胸部でおきた病気やケガすべてを診る呼吸器外科

産声を上げた瞬間から息をひきとる最期の時まで、ほとんど意識することなく行われている呼吸。呼吸は私たちの生命維持のために欠かせない存在ですが、「呼吸器外科」という診療科にはあまりなじみがないかもしれません。
「人間の胸部にはいろいろな器官がありますが、当科で取り扱うのは心臓・血管・食道を除いたすべての器官。具体的には肺や気管支といった呼吸器、胸腺や神経など左右の肺の間にある縦隔臓器、さらに肋骨や横隔膜といった胸郭部位など」と教えてくれたのは呼吸器外科部長の稲葉医師。様々な対象疾患の中から、特に多いふたつの疾患についてお話を伺いました。

「肺がん」は女性にも増加中重く考えたい受動喫煙

日本人男性の死因のトップとして知られている肺がん。「肺がん手術による死亡率自体は大変低いのです。しかし喫煙者の数がまだ多すぎて、患者さんの数はいっこうに減りません。体に不調をきたしてから禁煙する方は多いのですが、肺が健康な状態になるまで15年もかかります。肺が元の状態に戻るまでにがんを発症してしまうというのは十分にあり得ること」と稲葉医師。近年は喫煙習慣のない女性の肺がんも増加傾向にあり、その背景には副流煙による長年の受動喫煙が指摘されています。「女性に増えているのは、肺がんの中でも『腺がん』という種類のがん。比較的進行が遅いため、早期発見できれば手術で除去できる可能性の高いがんですが、レントゲン撮影で影が見える頃には症状が進んでしまっていることもあります。家族と自分の健康を考えて、タバコは1日も早くやめたいものです」(稲葉医師)

予防が難しい「自然気胸」早期の治療と手術が有効

数年前に人気アイドルが罹ったこともあり、広く知られるようになった自然気胸。「体質や喫煙の影響により、肺の一部に肺嚢胞と呼ばれる風船状の組織ができることがあります。この肺嚢胞が何らかのきっかけで破裂して空気が漏れると、胸腔の中で肺が圧迫されて縮んでしまいます。この状態が気胸です。内科療法で治ることもありますが、手術で肺嚢胞を除去すれば再発も少なく、その後の生活に支障をきたすことはほとんどありません」(稲葉医師)痛みの感じ方には個人差があり、自己判断は難しいもの。不調を感じたら早めに受診し、症状が軽いうちに治療を受けることが最善策と言えそうです。

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