しずおか日赤訪問看護ステーションブログHomenursing blog

卒業式参列支援をしてきました。

2020年6月5日

がんの末期にて余命半年と宣告を受けたAさんでしたが、残された時間を家族と過ごしたいと強く希望され在宅での療養を開始しました。退院後の本人の目標は「娘さんの卒業式に出席すること」でした。
しかし、痛みや吐き気が増強したため1週間で再入院となってしまいました。食事は摂れず30分座ることが精一杯な状態の為、退院は間に合わず一度は卒業式に出席することを諦めざるを得なかったAさん。しかし、ご家族から「何とか願いを叶えてあげたい」と相談があり、主治医・病棟看護師・薬剤師・訪問看護師などと何度か話し合い、学校にもご協力頂きサポート体制を整えることで、2時間以内の外出許可がでました。
卒業式当日、会場では痛みが出始め、鎮痛剤の点滴を行いながらの出席となりました。「なんとか最後までいられますように」そう皆で願い、見守らせて頂きました。式の間、Aさんは娘さんから一瞬も目を離すことなく、入院中とは思えないくらい気丈にふるまい、その姿は子供の成長を見届ける母親の表情になっていました。
一方、答辞を読む娘さんは、式当日まで毎日病室に向かい母親の前で何度も練習していました。当日の娘さんの読む言葉ひとつひとつに母や家族への感謝も込められているように感じました。また、式の間、母親に「大丈夫?」と声をかけ心配そうに見守る息子さんたちや、妻が参列できたことに感無量となり涙を流す夫の姿もありました。本人の願いと家族の思いが一つになった瞬間だったと思います。
卒業式の後も「本当に参加できてよかった」と嬉しそうに写真を見返し、笑顔にあふれたAさんの姿は今でも印象的に残っています。Aさんは卒業式から間もなく静かに永眠されました。訪問看護師として、Aさんやご家族にとって最後となった家族行事の支援をさせていただけたことに感謝いたします。

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